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 ニッポンつれづれ帖

 日常の中の”日本”そして私

「パニックになる」という前提

 原発問題とセットになった風評被害という言葉。毎日テレビでも新聞でも会う言葉。
テレビを見ていると 何やらたった一人の犯人探しをして それで終わってしまうのではないかと思ってしまいます。

さらに、外国の一部の過激な報道が世界的な風評被害となって、日本経済に大きな打撃を与えていると報道すると
『困りますよね~こんなことされちゃ』 などと テレビに出演するようなメディア力のある人まで まるでご自分も100%被害者、と言っているように私には聞こえます。

テレビであっさりと言葉を吐く人たちを見ていると 心の中にぐるぐる言葉が渦巻いていきます。
日本にはこの災害の当事者として グローバルになった世界の一員として もっと適正な発信をする責任はなかったのか?
国民が 事実は何でも真摯に受け止め共に分かち合おう、と政府に日頃からきちんと向き合っていたのか?
専門家は 不安や事実を 素人である一般国民とも 真剣に分かち合おうとしたのか?


 日本政府が 素人が見ても何かを隠しているような怯えているような発表しかしなかったころ、
新聞やマスコミは 『パニックにならないよう』熟慮の末の態度と 擁護していたような気がします。
『本当のことを言うと パニックになる』・・・それは衆愚ということでしょうか?
果たして、真剣に深刻な事態を知らされたとき そんなに容易に 私たち国民は愚かな方向へ突っ走るのでしょうか?



 突然、私事なのですが 
私には 公共の検査機関での子宮頸がんの生体検査が原因で腹膜炎を起こし(起こされ?)
片方の卵管卵巣を摘出手術まで余儀なくされた経験があります。

検査方法とその後の処置に問題があったのですが 不測の事態の連続、
しかも急激に悪化し、ただただ恐ろしさの中にいたときに 
私にきちんと向き合ってくれた主治医の先生がいてくれたおかげで 自分の運を受け入れられたのでした。


 検査翌日から腹膜炎となり、一ヶ月治療していたのが悪化し緊急入院。当初は手術は不要の予定が、
どんなに薬を強くしても毎晩40度の熱が出てくること一週間。
昼は読書もでき、夜熱が出ても看護婦さんが黙って鎮痛剤を出すだけなので
悪化しているとは素人の私には気づきませんでした。
しかし毎日回診に来てくださる主治医の先生だけが日に日に難しい顔になりました。
もともと口数の少ない先生でしたが、こちらの質問には根気強く答えてくださるので信頼はしていたものの
もっと明るく物事を言ってくれれば 気分も違うのに~とも思っていました。
しかし退院の目途どころか精密に検査したところ、命にかかわるということで緊急手術が決まり 
近親者と手術の説明を受ける事態になってしまいました。

 説明は その日先生がいくつかの手術の後に時間を取ってくださったので 夜10時過ぎにでした。
若くてもかなりお疲れのはずでしたがいつも通りに落ち着いた物腰でした。パニック寸前の私を見据えて
『全力をつくします。最悪の場合も含めて今からきちんと話合いましょう。』と言われました。
すでに私は予想外の展開ばかりで精神的にギリギリなのに、さらに手術自体の最悪の結果についても
伝えられました。

 「先生は同じ土俵に立って、私と同じ気持ちで事実に向き合ってくれている」そう感じられたものの、
その夜は混乱し怒りやら悲しいやらで眠れず、夜勤の看護婦さんが一時間ほど話相手をしてくれました。
・・でもそうして夜が明けたとき、『あの先生なら、もし失敗したとしても私は受け入れられる』 
と思えました。(決して 腕を疑っていたのではありません~)
自分の運はまだ受け入れがたいけれど あの先生のごまかさない、逃げない姿勢は尊い、
それだけは確信しました。

 幸い、先生が危惧した最悪のシナリオにはならず むしろ最良のシナリオとなって手術は済みました。
一週間を過ぎて抜糸、そして抜管がすむころには 手術前の先生とは別人のような 
おっとりとしたにこやかな表情で回診にきてくださいました。
手術室で麻酔前に黙って目を合わせてくれた先生に命を委ねた時の気持ちは 
いまだに私のお守りのような気がします。




・・・もし、今回の原発問題のように、私達国民が現実の深刻な事態を知らされたとき、
予備知識もなく予想外の事態で もちろん初めは混乱もあるでしょう。

でも、『一緒に向き合いましょう』といわれたときに そうして本当にその言葉に誠意を感じたときに、
希望や回復の可能性を台無しにするような 子供や老人が巻き込まれ被害にあうような 
そんなパニックを私たち国民が 本当に起こすのでしょうか??
もちろん、一時的な騒ぎはあったとしても 国民といういろんな要素の人の集まりの中で
よい方向に向かおうとする相互作用は起きない、と政府もマスコミも思っているのでしょうか?

もし、国が違えば「国民として ともに立ち向かおう!」という政府の表現になったのでは?
とも思います。


危機意識、そして危機管理。
政府と国民のお互いの不信感を このままにしておいていいはずは 絶対ないと思います。 
 

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  1. 2011/04/06(水) 11:23:31|
  2. 社会 society
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申し訳ない

 やっと停電が終わってつけたテレビの映像は 阪神淡路の震災の時も言葉を失ったけれど
見覚えのあるはずの景色のあまりの変わりようは 言葉というより声も出ませんでした。

 天災だとわかっていても 何にどう向けて どう収めたらいいのかわからない感情があったけれど
天災の後の 原発の一連の出来事に対する感情は ますます あちこちに飛び散って
自分の中で収集がつきませんでした。 

 危機管理、指導力、初期判断・・・いろんな言葉で責めることはできるけれど
なるべく俯瞰で考えようとすると、思い浮かぶのは 「申し訳ない」という言葉でした。

当たり前に私たちを守ってくれてると思ってきた 空気・水・土を
私たちが 粗末にして 昔の人のように謙虚に大事にしていなかったことが
結局自らの命も脅かすことになり、そんな政府を作らせたのではないだろうか? と思います。
先祖が少なくとも汚さずにきたものを 私たちの時代が大変なことをしてしまいました。


 よりによって 働くことも人と分かち合うことを厭わない、そんな人が多い農業・漁業・酪農の方達に
天災だけでなく 立ち直る力さえ奪うような人災まで起こすような政府を作ったのは 誰?
もう海に囲まれた島国とはいえ、 オンラインで テロも 核戦争も起きうる時代だというのに
考えるべき問題を先延ばしにしてこなかっただろうか?
私たちは 外国で起きていることを対岸の火事のようにしか見ていなかったのでは?


 日本政府の口が重かった分、海外の報道に火がついたのでは?とも思います。
外国メディアの報道は 各国の思惑や事情に左右されていた部分もありましたが、 
私たち日本国民と諸外国が共通して まず第一に日本政府に欲しかったのは 
単純に「誠実さ」では なかったのでしょうか?

非常時、しかも未曾有の天災なのですから、混乱して当たり前ですが
せめて 責任ある立場として いいことも悪いこともさらけ出す当局の誠実さがあってこそ
諸外国も 国民も共感して この一大事に立ち向かえるのではないでしょうか?

   人間性、誠実さ。 究極の非常時に求められたのは 能力ではなく誠意。 


私たち大人は こどもたちに譲る大切な財産を 手渡す前に損ねてしまい
伝える知恵もまだまだ足りないけれど 
せめて誠実さだけは 絶対に伝えないと。  
私たちに渡してくれた先祖にも これから渡す子供たちにも 申し訳ないです。





           被災地にはさらに辛い今年の春の寒さでしたが 
           桜は遅れながらも 今年も咲いてくれました。

               今年の桜を見ることなく 冷たい波に運ばれていかれた多くの方たち。

               2011年桜2 4月5日


           今はまだ、 どうしてこんなことに? という言葉ばかりが浮かんできます。
              でも、せめて考え続けることは諦めません。 まずはそこから、と思います。



テーマ:思うこと感じること - ジャンル:ライフ

  1. 2011/04/05(火) 23:39:26|
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